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演奏者が語る演奏会の裏話

   東京芸大卒で、N響の第一バイオリン奏者を32年間も務めたバイオリニスト鶴我祐子さんが書いた「バイオリニストは目が赤い」(新潮社)、滅法面白いです。ことに演奏会の裏話を書いた「演奏会はスリリング」という一文など、何度繰り返し読んだか解りません。何しろ、話が面白い上に文章が素晴らしいのです。

   リヒャルト・シュトラウスの作品、「マクベス」序曲は演奏がかなり難しいのだそうです。これはもう鶴我さんの原文をそのまま書きます。《演奏会本番、曲は始まった。しかし、船はまもなく座礁した。「初めからやり直しかな」と思う間も与えず、暗譜で振っていたザヴァリッシュは目の前のスコアをイッパツでめくった。

   そして、静かな声で「E」(スコアにある練習用のアルファベット)と言ったのだ。一秒後、音楽は再開し、無事に最後までいった。お客様は気づいただろうか?曲の途中で、指揮者が「いい」と言うことになっているんだと思ったかな》。ともかく、演奏の途中で大問題が発生したのです。鶴我さんはこう続けます。

   《私はもう、事故が起こったことよりも、ザヴァリッシュの「眠れるボス」ぶりを見られて興奮していた。あの一瞬に、彼のしてきた膨大な量の勉強と経験を、垣間見ることができた、まるで、雲のあいだから全容を現したエベレストのようだった》。鶴我さんの筆の冴えと大指揮者ザヴァリッシュの咄嗟の危機管理に私も興奮です。

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